化学物質の営業秘密を守る「代替化学名」制度とは?

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2026年4月1日、労働安全衛生法の改正により、営業秘密である化学物質の成分を「代替化学名等」でSDS通知できる制度が施行されました。営業秘密の保護と労働者の安全衛生確保を両立させる制度です。衛生管理者試験でも、SDS・リスクアセスメント・GHS・営業秘密といったキーワードとあわせて出題される可能性があるため、押さえておきましょう。

1.なぜ必要になったのか

労働安全衛生法では、危険性・有害性のある化学物質を譲渡・提供する際にSDS(安全データシート)を交付する義務があります。しかし、成分名をそのまま公開すると、企業独自の配合技術などが知られてしまう場合があります。そこで、一定の条件を満たせば、実際の化学名の代わりに「代替化学名等」を通知できる仕組みが設けられました。

重要なのは、「営業秘密だから安全情報を隠してよい」制度ではないということです。あくまで、労働者の安全衛生を確保しながら営業秘密も保護するための制度です。

2.「代替化学名」とは

実際の化学名の一部を省略・置換した名称です。化学名を構成する要素として、

  • 母体化合物の構造
  • 対イオンの構造・数
  • 立体異性体の情報
  • 置換基の構造・数・位置

の4つがあり、原則としてこのうち1つを一般名に置換・削除します。構造が単純で1要素だけでは成分が特定されるおそれが高い場合は、例外的に2要素までの置換・削除が認められます(3要素以上は不可)。

3.すべての物質に使えるわけではない

「営業秘密ならどんな物質でも使える」わけではありません。GHS分類による危険性・有害性の区分や、混合物中の成分濃度が濃度限界未満であることなど、厚生労働大臣が告示(令和8年厚生労働省告示第42号)で定める条件をすべて満たす必要があります。特定化学物質、鉛・有機溶剤関連物質、皮膚等障害化学物質、がん原性物質などは対象外です。実務では個別物質ごとに最新の告示・通達で確認しましょう。

4.代替化学名を使っても安全情報は必要

代替化学名を使う場合でも、リスクアセスメントに必要な危険性・有害性情報は適切に伝えなければなりません。営業秘密の保護>労働者の安全ではなく、両立が目的です。SDSには、代替化学名等を使用した成分が「営業秘密」であることを明示する必要があります。

5.「代替有害性情報」を使う場合

代替化学名にしても対象物質の種類が少なく成分が特定されてしまう場合、成分名の通知に代えて「代替有害性情報」(人体に及ぼす作用に関する情報)を通知できます。

6.医療上の緊急時は開示する

営業秘密であっても、医師が診断・治療のために成分情報を必要とする場合は直ちに開示する仕組みがあります。代替化学名等を通知する事業者は、医師からの照会に対応できる緊急連絡先をSDS等に記載する義務があります(外部委託は可能だが責任は事業者が負う)。

7.実務でよくある失敗

  • 対象外物質なのに自己判断で成分名を省略してしまう
  • 代替化学名だけ記載し、リスクアセスメントに必要な情報が不十分になる
  • 緊急時の連絡体制を準備していない

SDS担当者だけでなく、衛生管理者・産業医・管理職も情報開示の仕組みを理解しておくことが重要です。

8.衛生管理者試験の対策ポイント

頻出キーワード

労働安全衛生法第57条の2/SDS/通知対象物/リスクアセスメント/GHS/営業秘密/代替化学名/代替有害性情報/医師への情報開示

数字・日付

  • 2026年4月1日:制度の施行日
  • 5年間:代替化学名等を通知した事業者の記録保存期間(事業廃止時は労働基準監督署長へ引き渡し)
  • 1つ(原則)/2要素まで(例外):化学名構成要素の置換・削除数

日付・期間・数字を入れ替えた選択肢に注意しましょう。

9.まとめ

「代替化学名等」の制度は、企業の営業秘密を守るだけの制度ではなく、「秘密を守ること」「安全情報を伝えること」「労働者の健康を守ること」を両立させる仕組みです。SDSやリスクアセスメントを単独で覚えるのではなく、「情報を正しく伝える→リスクを評価する→対策を取る」という流れで理解すると、試験にも実務にも役立ちます。

実務で個別物質が対象となるかを判断する際は、必ず厚生労働省の最新の告示・通達・マニュアル等をご確認ください。

参考

・厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律等(代替化学名等関係)の施行について」(基発第220005号)
・厚生労働省「通知対象物に係る代替化学名等の通知に関する指針案に関する意見募集の結果について」(令和8年2月20日)

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