令和7年度の過労死等労災から学ぶ職場改善
カテゴリ: 【労務の注意喚起】
「残業時間が少なければ、過労死対策は十分」と考えていないでしょうか。
厚生労働省が公表した令和7年度「過労死等の労災補償状況」では、過労死等に関する労災請求件数が6,212件となり、前年度から1,402件増加しました。特に精神障害に関する請求は4,958件に達しています。
こうした数字は、過労死等の防止を長時間労働だけの問題として捉えるのではなく、仕事量や人間関係、ハラスメントなどを含めて考える必要があることを示しています。
本記事では、最新の統計から見える傾向と、管理職・人事担当者、衛生管理者が実務で確認したいポイントを解説します。
令和7年度の過労死等労災の状況
令和7年度の過労死等に関する労災請求件数は6,212件、支給決定件数は1,310件でした。このうち死亡・自殺(未遂を含む)は145件です。
なお、請求件数と支給決定件数は同じ年度の事案を比較した数字ではありません。支給決定には過年度に請求された事案も含まれるため、単純に「請求のうち何%が認定された」と判断することはできません。
精神障害の請求が目立つ
精神障害に関する請求件数は4,958件、支給決定件数は1,082件でした。
支給決定につながった出来事では、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」が222件で最多となっています。
このほか、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」「セクシュアルハラスメントを受けた」なども挙げられています。
職場のメンタルヘルス対策では、労働時間だけでなく、人間関係や業務上の心理的負荷にも目を向けることが重要です。
「残業が少ないから大丈夫」は危険
精神障害の支給決定件数を時間外労働時間別に見ると、「20時間未満」が57件で最も多くなっています。
もちろん、この数字だけから「残業が少なくても精神障害になる」と単純に判断することはできません。
しかし、勤怠データだけでは、
- 上司から強い叱責を受けている
- 急激に業務量が増えた
- 顧客対応によるストレスが集中している
- 特定の社員に仕事が偏っている
といった状況を十分に把握できない場合があります。
管理職は、残業時間だけでなく「仕事や職場環境にどのような変化が起きているか」を見る必要があります。
管理職が確認したい3つのポイント
1.業務量と仕事内容の変化を見る
異動、昇進、新規プロジェクト、人員減少などがあった際は、特定の社員に負担が集中していないか確認しましょう。
「残業時間が基準以内だから問題ない」と判断するのではなく、仕事内容や責任の変化も確認することが大切です。
2.ハラスメントを放置しない
精神障害の支給決定では、パワーハラスメントなどが原因となった事案も確認されています。
管理職自身がハラスメント防止について理解し、必要な指導と過度な叱責を区別できるようにしておくことが重要です。
人事担当者や衛生管理者は、管理職研修などを通じて継続的に周知するとよいでしょう。
3.相談・連携ルートを明確にする
従業員が問題を抱えた際に、直属の上司だけでなく、人事部門や産業医等にも相談できる体制を整えておきましょう。
相談を受けた管理職が一人で問題を抱え込まず、必要に応じて専門部署や産業保健スタッフにつなぐ仕組みも重要です。
衛生管理者が取り組みたい職場改善
衛生管理者にとっても、今回の統計は職場環境を見直す材料になります。
職場巡視や衛生委員会などでは、単に「残業時間が多い部署」を確認するだけでなく、
「仕事量や人間関係などの負担が特定の部署・社員に集中していないか」
という視点を持つことが大切です。
長時間労働者への対応、ストレスチェック、休職・復職の状況などを、個人情報やプライバシーに配慮しながら職場改善につなげることも考えられます。
過労死対策は日常の管理から
過労死等の防止というと、特別な制度を新しく導入することを考えがちです。
しかし実務では、
- 業務量の偏りを確認する
- 管理職が部下の変化を把握する
- ハラスメントを放置しない
- 長時間労働者への対応を徹底する
- 相談窓口を周知する
- 必要に応じて産業医等につなぐ
といった日常的な取り組みが重要です。
令和7年度の統計をきっかけに、「労働時間」だけでなく「仕事の内容・人間関係・職場環境」まで含めて従業員の負荷を確認する体制を見直してみてはいかがでしょうか。
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